「終の住処での医療と介護の在り方について」~在宅と病院での終末期医療~というテーマでした。
住み慣れた地域で暮らし続け、最期を迎えられるような施策の一つとして、地域包括ケアという仕組みが整えられてきています。しかし、病院で亡くなる人が8 割を占める現実の中、重度の障害のある高齢者の方々にとって、終の住処として最後までその人らしい暮らしが保障されているかは疑問です。最後まで尊厳ある暮らしが継続できることはだれしもが願うことであり、その先に満足いく看取りがあると考えています。ほとんどの人が終末期の延命を望まず、自然で安らかな最期を希望しているにも関わらず、病院では平穏死が叶えられないことが少なくありません。終末期の見極めは難しく、家族の死生観も様々であるため、終末期の医療は難題ばかりです。本セミナーでは、病院での平穏死が難しい理由を説明し、当院の取り組みを紹介しました。
当院は長年暮らした自宅に住めなくなり、病院で最期を迎える高齢者に何が必要かを考え、その人らしい暮らしを保証するためにケアの改善に取り組んできました。環境整備の重要性を痛感し、その行きついた先が個室ユニットケアでした。当院の介護療養病棟はすべて個室であり、医療療養病棟36床は個室で残りの20床は2人部屋です。個室ユニットケアを行っている病院は日本に4軒しかありません。
個室ユニットケアは、
① 少人数ケア体制を作り患者や家族と関係を強化できる。
(馴染みの関係)
② 自分の住まいと思えるような環境を作ることができる。
(プライベートルーム・暮らしの継続)
③ これまでの生活習慣を尊重する事が出来る。(個別ケア)
④ 24時間の介護と医療で、暮らしを保障することができる 。
⑤ 固定配置により患者の変化が気付きやすい。 特別なケアに熟練できる。
⑥ 急変や重症者に対応しやすい。
⑦ 院内感染のリスクが低い。
⑧ 認知症の問題行動が減少する。
⑨ 面会者の訪問回数や時間が増加し、家族との関係が深まる。
⑩ 緩和ケアや看取りがスムーズに行える。
などの利点があります。
当院は病院でありながら、往診と訪問看護とヘルパーの来る自分の部屋のような環境であり、終の住処として最後まで生活を支える医療が提供できていると考えています。当院には個室料という負担金はありません。病院にしか居場所がなく、入院が長期に及ぶ重度の疾病や障害を持つ高齢者ほど個室環境が必要と実感しているからです。